ワクチン講座
ワクチンってどんなもの?
注射等によりペットの体の中に入ると、免疫作用により抗体が作られ、この抗体が病気になるのを防いでくれます。
ワクチンはいつ頃接種すればいいの?
ワクチンで防げる病気ってどんなもの?
ワクチン接種で防げる病気はわんちゃん、ネコちゃんで異なります。それぞれの種で、感染してしまうと致命的な打撃を受ける恐れのある病気を防ぐために接種いたします。当院では以下の種類を取り揃えております。
猫:3種混合ワクチン
◆猫カリシウイルス感染症
感染初期は風邪によく似たくしゃみ、鼻水、発熱などですが、症状が進むと舌や口腔内に潰瘍、水疱ができるのが特徴です。ときに急性肺炎を併発したり、関節の痛みからふらつき歩行が見られる場合もあります。
◆猫ウイルス性鼻気管炎
風邪によく似たくしゃみ、鼻水、咳、鼻炎などの呼吸器症状のほか、発熱や角膜炎、結膜炎を引き起こし、重度になると死亡することがあります。同居しているネコちゃんや外のネコとの接触、食器や寝具を通して感染するので注意が必要です。
◆猫汎白血球減少症
血液中の白血球が極度に減少してしまう病気です。食欲、元気消失、発熱、嘔吐、下痢などの症状が特徴で、死亡率の高い病気です。病気の経過が速く治療が困難に鳴る場合が多いので、ワクチンによる予防が有効です。
猫:5種混合ワクチン (上記3種に以下の2種をプラス)
◆猫白血病ウイルス感染症
持続感染するとほとんどの猫が三年以内に死亡してしまう怖い病気です。白血病やリンパ腫などの血液のガン、貧血、流産などを引き起こします。免疫力が低下してしまうのでその他の病気も併発してしまいます。感染から発病までの期間が長く、その間は健康に見えてもウイルスを排出し、その他の猫へうつしてしまいます。
◆猫クラミジア感染症
目や鼻から菌が侵入するため、結膜炎、鼻水、くしゃみ、咳が主症状で重度になると肺炎を起こすこともあります。人に感染して結膜炎等の症状が出る場合もあります。
犬:6種混合ワクチン
◆犬ジステンパー
目ヤニ、鼻水、元気・食欲の低下、嘔吐や下痢等消化器症状を示し、高熱が出ます。病気が進行すると神経系がおかされてしまい、麻痺などの後遺症が残ってしまう場合があります。
◆犬パルボウイルス感染症
激しい嘔吐や下痢、元気・食欲の低下、急激な衰弱等がおもな症状です。重症になると脱水症状が進み、短時間で死亡してしまう場合もあります。子犬の間で非常に伝染力の強い病気です。
◆犬伝染性肝炎
発熱、腹痛、嘔吐や下痢の消化器症状、目が白く濁ったりします。生後1年未満の子犬が感染すると、全く症状を示すことなく突然死する場合があります。
◆犬アデノウイルス2型感染症
発熱、元気・食欲の低下、くしゃみ、鼻水、乾いた咳がおもな症状で、肺炎を起こしてしまう場合もあります。他のウイルス性疾患との混合感染により症状が重くなってしまい、死亡率が高くなってしまう病気です。
◆犬パラインフルエンザウイルス感染症
風邪のような呼吸器症状が見られ、混合感染や二次感染が起こると重症化して死亡してしまう場合もあります。伝染性が非常に強い病気です。
◆犬コロナウイルス感染症
成犬の場合は軽度の胃腸炎で治癒の経過をたどることが多いですが、子犬の場合、嘔吐やひどい下痢を引き起こし死亡してしまう場合もある病気です。
犬:8種混合ワクチン (上記6種に以下プラス)
◆犬レプトスピラ感染症(イクテロヘモラジー型)
◆犬レプトスピラ感染症(カニコーラ型)
この病気は細菌が原因となる伝染性の病気で、数多くの血清型(種類)があります。当院で予防に使用しているワクチンはイクテロヘモラジー型、カニコーラ型の2種類の血清型が入っています。野生の野ねずみの尿から感染し、感染すると発熱、筋肉痛、黄疸、脱水症状、腎障害などを示し、重症例では死亡してしまう場合もあります。
副作用は無いの?
その他注意点はありますか?
1.お時間にゆとりがあるならば、接種後の様子を観察できる午前中の接種をお勧めいたします。特に初回のワクチンは午前中がお勧めです。
2.接種後は安静につとめ、お散歩も控えめにしていただくのが安全です。また接種後1~2日はシャンプーや激しい運動も控えましょう。
3.ワクチン接種を予定している日の朝に体調がすぐれないと感じた場合は、無理に接種せず予定を延期してください。
4.過去にワクチン接種後、体調を崩したことのある方はご相談ください。
狂犬病のワクチンだけが義務なのはなぜ?
動物向けワクチンの中でも狂犬病だけは特別で、「狂犬病予防法」により接種が義務化されています。
同法第五条には
犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者。以下同じ。)は、その犬について、厚生労働省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせなければならない。
とあり、違反した場合の罰則も存在します。
狂犬病だけが特殊な扱いをされているのには理由があり、人や犬、猫をはじめとするすべての哺乳動物がかかる人畜共通感染症で、現在までに有効な治療法が確立されておらず、発病した場合は人も動物もそのほぼ100%が死亡するという非常に危険な病気だからです。(狂犬病は「最も致死率が高い病気」としてギネスブックに載っています)
日本では1971年以来発生はありませんでしたが、2006年にフィリピンで犬に咬まれた男性が帰国し、日本で狂犬病を発症し亡くなりました。現在日本は島国であるという利点を生かし狂犬病を水際で食い止めておりますが、世界中の流通が集まる昨今の日本では、いつ狂犬病が進入してきてもおかしくありません。WHO(世界保健機関)によると、狂犬病が進入してきた際に流行を防ぐためには「免疫水準が少なくとも70%必要」とガイドラインを定めています。しかし現在の日本における狂犬病予防注射率は40%以下と言われております。これでは狂犬病が一旦発生してしまったらまん延してしまうかもしれません。
愛犬への狂犬病予防接種は、犬の命だけではなく人の命、社会をも守ることにつながりますので、役所への畜犬登録、年一度の注射接種は必ず行いましょう。
フィラリアの予防
犬フィラリア症の症状
予防方法は?
投薬シーズンの開始前に、まず血液検査で感染していないことを確認いたします。感染していなければ5月から12月までの8ヶ月間、毎月1回定期的にお薬を投薬します。お薬の種類は錠剤から投薬しやすいチュアブルタイプまでさまざまですが、一般的に効果にほとんど差はありません。これらは、蚊によって犬の体内に侵入したフィラリアの幼虫を、心臓へ到達する前に殺してしまうことでフィラリア症を予防しているのです。
※「投与後1ヶ月間効果が持続してフィラリアの感染を防いでいる」との誤解もあるようですが、上記のようにフィラリアの幼虫を殺してしまうことでフィラリア症を予防しているのであって、フィラリアの感染を未然に防ぐ作用があるわけではありませんので注意が必要です。