マイクロチップに関しては当院のホームページ「ペット医療マメ知識」で触れているので割愛します。以下につぶやいているのは私の独り言ですので、荒川区獣医師会や東京都獣医師会の考え、方針ではありません。念のため。
この度国会でマイクロチップ装着を義務付けることなどを柱とする改正動物愛護法の改正案が成立したのは喜ばしいことなのか?ちょっと考えるところがあります。
①良いと思うところ
迷子札として機能させる場合は、汚れたり外れたりで認識できなくなるということはありません。ちゃんと埋め込まれていれば迷子として保護された施設や警察、動物病院でリーダーを当てることによりナンバーを読み取ることが出来ます。荒川区保健所、荒川区獣医師会に所属している動物病院ではマイクロチップリーダーを保有しているので、飼い主が分からないペットの連絡があれば保健所職員や獣医師が出向いてリーダーを当て、マイクロチップナンバーを読み取ることが出来ます。
東日本大震災では、マイクロチップのデータから飼い主さんの元へ戻れたという心温まるお話も伺いました。
②どうかな?と思うところ
ブリーダーやペットショップにてマイクロチップを入れたとしても、後にオーナーとなった飼い主さんが登録の手続を怠れば、マイクロチップのナンバーはセンターに登録されず、未登録となってしまいます。未登録であれば、リーダーでナンバーを読み取れたとしても飼い主さんは判明しないので、もし迷子になってしまったら・・・。
この度の法案では、現在飼育されているペットに関しては「努力義務」と言う形で落ち着きました。「努力義務」とは「マイクロチップを入れることが義務ではないけれど、なるべく入れてね。」と言うことです。
しかしながら、ブリーダー、ペットショップでのマイクロチップが義務化され、世の中にマイクロチップという存在が広く周知されるようになると、すべての犬猫への義務化へと拡大される可能性が出てきます。もしそうなれば、逆を返すと何らかの事情でマイクロチップを装着していない子、マイクロチップの場所が移動してしまい通常の挿入場所(頚部皮下)でリーダーが反応しない子たちは飼い主がいない子と判断されてしまい、処分の対象になってしまう場合もあります。
現在東京では野良犬はほとんどいないと思いますが、野良猫は「地域猫」という形でその存在も認識されております。もちろんマイクロチップを入れることは出来ません。今後もし法改正が全頭マイクロチップ義務化の方向に流れるのであれば、地域猫たちも上記の処分対象になってしまうかもしれません。
海外のお話ですが、マイクロチップを装着した犬を捨てる時に、飼い主が判明しないようにマイクロチップをナイフで切り取るという虐待事例も報告されています。
犬猫の存在価値を再認識し、終生大切に飼育していくという考え方は大賛成です。法案のベクトルが「すべて犬猫の為」という方向からずれないように祈るのみです。
独り言でした。